―――符術―――

己が体に流れる霊力を行使し、式を発現する太古の法
黒乃家は古来から符術を生業とし、その法を代々継承してきた家系だった。

天火は自らに疑問を向ける。
自分は何故、そのような黒乃家に養子として育てられたのか……、と
なぜなら、彼は万物が持ちうる筈の霊力を僅かにも具えていなかったから。
術師として生きる姉や学園の先輩と共に過ごしながら、
知識として霊力と符術の存在を知るに過ぎなかった。

黒乃家が管理する神社に御神体として祭られている二振りの刀
刀身が血のように紅く、見るものを魅了する美しい刃
彼は確たる自分を追い求めながらも、この刀のようになりたいと思っていた。
気高く、誇り高く、そして大切な何かを護れるようなそんな剣に……

そして、いつまでも続くと思われていた日常は音を立てて崩れ始める。

自分の名を呼ぶ誰かの声
夢の中のもう一人の自分
殺意にまみれた獣の咆哮

その日を境に彼は別の世界へと足を踏み入れてしまうことになった。
符術という存在に分け隔てられていた、別の世界に……


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